成年後見制度の概要
成年後見制度とは、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないように、
家庭裁判所に申立てをして、その方を保護することを目的として構築された制度です。
例えば、判断能力が不十分な状態のまま保護もされなければ、自分に不利益な契約であっても契約してしまうということが発生します。
そこで、判断能力の程度に応じて、成年後見人などの保護者を選任し、法律行為の代理権、取消権、同意権を付与することになります。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があり、その制度を利用する際の申立手続きについてご紹介します。
成年後見人を選任し、判断能力が不十分となった者に保護を及ぼすためには、家庭裁判所に申立をすることになるため、
当事務所では成年後見申立の書類一式の作成を承っております。
法定後見制度の流れ
現在の状況、支援してほしい人や内容などをお聞かせください。
お仕事で忙しい方、平日の昼間は時間を取りにくいという方は、事前にご連絡いただければ、平日夜や土日祝もご相談を受け付けております。
ご依頼いただいた場合は、正式に契約となります。
早速、必要書類の収集、申立日の予約、申立書の作成など、申立の準備を進めていきます。
申立書一式を、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
その際、調査官が申立人と面接を行い、本人の身体状況や本人の意向などの聴き取りを行います。
また、成年後見人候補者についても同様に面接が行われ、欠格事由やその適格性の審査のため、聴き取りが行われます。
調査官は原則、本人と面談し、本人が申立を理解しているか、候補者が後見人に就任することを賛成しているかなどの聴き取りを行います。
ただし、体調不良などで本人が家庭裁判所に出向くことが難しい場合は、調査官が本人のもとに出張することになります。
鑑定については、家庭裁判所が必要と判断した場合に行うことになります。
親族(原則、本人の相続人の範囲まで)に対しては、申立受理の直後に書面照会書が送付され、意向の確認が行われます。
申立が認められれば、後見開始の審判がなされ、成年後見人に対して審判書が送付されます。
なお、申立から審判までは、約1ヶ月から2ヶ月ほどかかります。
審判所が届いてから2週間経過するまでに、不服申立てがなければ、審判は確定します。
ここから成年後見人の任務が開始します。
審判確定を受けて、家庭裁判所は東京法務局に後見登記を嘱託します。
登記が完了すると、家庭裁判所から成年後見人に登記番号が通知され、成年後見人は登記事項証明書を取得することができるようになります。この書類は、その後の業務で使用することになります。
法定後見制度の利用条件
下記のような事情がある場合、法定後見制度を利用することで代理行為により目的を達したり、取消権を用いて不利益な契約を取消したりすることで問題解決へ向かいます。
任意後見制度の概要
任意後見制度は、本人が契約締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分となったときに備えて、
支援してほしい人(任意後見受任者)との間で、支援してほしい事務(後見事務)を依頼する契約(任意後見契約)を行い、
判断能力が不十分となったときに、契約の内容に従って任意後見人が本人の意思を実現する制度です。
判断能力が不十分となったときに家庭裁判所に申立てることにより、任意後見監督人が選任され、任意後見受任者が任意後見人となり、
任意後見契約の内容が実現されているかは、この任意後見監督人に監督されることとなります。
任意後見制度は法定後見制度に比べて、より本人の意向や希望を反映しやすいとも言えますが、法定後見制度で規定されているような
同意権や取消権がないため、物品購入契約を取消したいというような場面では、本人保護がしにくいことになります。
それでも、任意後見契約の内容の自由さは、法定後見制度にはないものであり、本人が判断能力を有する内にその内容を決めることが
できることから、後見制度の利用を考えるうえで有力な選択肢といえます。
任意後見制度の流れ
現在の状況、支援してほしい人や内容などをお聞かせください。
お仕事で忙しい方、平日の昼間は時間を取りにくいという方は、事前にご連絡いただければ、平日夜や土日祝もご相談を受け付けております。
ご依頼いただいた場合は正式に契約となります。
早速、任意後見契約書及び代理権目録の原案、公証人との打合せ、必要書類の作成・収集などの任意後見契約書作成の準備を進めていきます。
さらに、即効型、移行型、将来型の内どのタイプとするのかに合わせて、必要となる契約書の作成を進めます。
本人及び任意後見人候補者が公証役場へ赴き、公正証書で任意後見契約を締結し、支援する人は任意後見受任者となります。
また、任意後見のタイプに合わせて、移行型であれば任意代理契約(財産管理委任契約)、将来型であれば見守り契約を締結します。
公証役場で任意後見契約公正証書が作成されると、公証人の嘱託により法務局に任意後見登記がなされます。
これが完了すると、公証役場から通知があり、業務処理に必要となる登記事項証明書の取得が可能となります。
移行型及び将来型の場合は、任意代理契約(財産管理委任契約)、または見守り契約の業務を処理することになり、
本人の判断能力が不十分となったときにSTEP5に進みます。
本人の判断能力が不十分になったことを受け、家庭裁判所に任意後見監督人選任申立を行います。
なお、判断能力不十分の程度としては、「精神上の障害により、本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき」が基準となります。
これは法定後見制度における「補助」と同程度と考えられており、「自己の財産を管理・処分するには援助が必要」程度と言えます。
申立を受けた調査官は、本人は同意しているのか、任意後見受任者が任意後見人となるのに適格か、任意後見監督人候補者がいる場合には、
その者についても同様に適格であるかなどの受任者や候補者、その他の関係者に調査を行います。
さらに、必要がある場合には審判官により審問(事情の聴き取り)が行われます。
審理の結果、申立が認められれば、任意後見監督人選任の審判が行われます。
申立から審判までは、2ヶ月から4ヶ月程度かかります。
任意後見監督人選任の審判については、任意後見受任者は任意後見人となり、任意後見契約に沿っての業務開始となります。
これを受けて、移行型の場合の任意代理契約(財産管理委任契約)及び将来型の場合の見守り契約は終了となります。
また、任意後見監督人による監督が開始されます。
このタイミングで家庭裁判所書記官の嘱託により、任意後見に審判の内容を反映させるための変更登記が行われます。
なお、仮に任意後見監督人選任却下の審判がなされた場合には、2週間以内に即時抗告ができます。
任意後見人は、任意後見契約に定めた内容の後見業務を行います。
任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所に定期的に報告します。
本人が亡くなると、任意後見契約は終了します。
これに伴い、任意後見人は財産を権限のある者(相続人や遺言執行者)に引渡します。
また、任意後見人は任意後見監督人に、前回の報告から契約終了までの業務の報告を行い、任意後見監督人はこれを精査して家庭裁判所に
報告します。
任意後見登記については、任意後見人が終了の登記を行います。
なお、葬儀や納骨、死亡後の財産処分など、死後の事務を委任したい場合には、別途、死後事務委任契約を締結しておくことが必要です。
任意後見契約の内容について
任意後見契約の内容としての法定の委任事項としては、「自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部」とされています。
これをわかりやすく分類すると、財産管理に関する法律行為と身上監護に関する法律行為に分類できます。
その具体的な例としては、次のようなものがあります。
財産管理委任契約について
財産管理委任契約は、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選び、具体的な管理内容を決めて委任するものです。
法定後見制度や任意後見制度は、現在や将来の精神上の障害による判断能力の低下がある場合の利用が前提となっていますが、財産管理委任契約は判断能力の低下がなくとも利用できる点に利点があります。
例えば、本人は判断能力を充分に有しているが、寝たきりに近い状態で金銭管理や支払いが難しい、施設や病院に入所・入院中で日常的な預貯金
以外の財産の保管管理ができない場合などが考えられます。
それゆえに、任意後見契約を締結した後、判断能力低下により任意後見監督人が選任され、任意後見が開始されるまでの本人の利益保護のために
利用される場合も多くなっており、当事務所としてもそのような利用の仕方をオススメしております。
財産管理委任契約のメリット
上記のような理由があり、日常的な預貯金以外の財産の保管や管理ができない場合に財産管理委任契約を利用すれば、
管理が行き届かない財産について、代理人に管理を委ねることができるため、本人の不安を解消することにつながります。
「本人が65歳になったとき」、「本人が入院したとき」、「心身障害のために自分で管理できなくなったと判断したとき」などと設定ができ、
「契約当日から」とすれば、早く管理を開始してほしいという場合にも対応可能なため、このような場合に財産管理委任契約が効果的です。
本来、委任契約は委任者の死亡により終了しますが、死後の直近の具体的な事務について生前から委託しておくことは有効と認められているため、特約で死後の事務処理を委任しておくことができます。
財産管理委任契約の権利の定義
財産管理委任契約において、どのような代理権を付与するかは自由に決めることができ、一つの委任契約に様々な代理権を定めることができます。
そのため、契約前に自分が求める支援内容となっているかを検討しておくことが、有意義な財産管理委任契約をするために必要です。
主な代理権については、次のようなものがあります。
財産管理委任契約と任意後見契約の関係
財産管理委任契約は、任意後見契約と合わせて利用することで、より効果を発揮するため、当事務所では合わせて利用することをオススメします。
任意後見契約は、本人の判断能力が低下してから開始されるのに対し、財産管理委任契約は判断能力が低下していない状態でも委任できます。
判断能力が低下してしまったときの備えとして任意後見契約を、それ以前の財産管理を財産管理委任契約にて支援してもらえれば、
本人の利益保護を継続することができます。