空き家対策業務に関する概要
人口の減少や過疎化が進行していくことにより、空き家の数は増加しております。
現在、全国の空き家は約820万戸に及び、住宅総数の約13.5%を占めていることがわかっています。
(総務省「住宅・土地統計調査」より)
空き家を放置することによる防犯・防災上の問題は、以前から懸念されていたのですが、
空き家が発生する原因は様々で、解決方法が見つからなかったり、利害関係の調整が困難であるなど、
さらには税法上の理由で放置されたままとなっている場合が多いのが現状です。
政府もこれを問題視して、平成26年11月27日には、「空家等対策の推進に関する特別措置法」
(空き家対策特別措置法)を公布し、平成27年5月26日から施行されています。
これにより、市町村長は空き家の所有者について、固定資産税の情報を内部で利用できるようになり、特定の空き家などについては解体、修繕、立竹木の伐採などの措置または指導、さらには行政代執行(行政が空き家の解体に必要な措置を施し、費用を所有者に請求する)ができることとするなど、
空き家対策を怠る所有者に対して、強制力の行使も念頭に置いています。
さらに、多くの自治体で空き家に関連する条例が制定されており、今後もこの動きは加速すると見られています。
今後、空き家に何も対策を施さずに放置していると、不利益を被る可能性が高く、これを問題解決の機会と捉えてみることで、
長い間眠っている資産を有効活用できるとも考えられます。
空き家の弊害について
空き家が周辺地域に及ぼす弊害として、それぞれ次のような弊害が発生する可能性があります。
空き家放置の所有者リスク
建物の所有者が負担する責任として、工作物責任(民法第717条)があります。
民法第717条1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を
賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
つまり、所有している空き家に瑕疵(不具合・欠陥など)があった場合に、他人へ損害を与えた、もしくは修繕が不十分で損害を与えた場合は、
保存の瑕疵により損害賠償責任が発生します。
例えば、空き家になった当初は問題のない家でも、時が経過して外壁材が壊れかけになり、修繕せずにそのまま放置していたら、
風などで外壁材が飛んでしまい、歩行者に当たって怪我をしたという事例では、空き家の所有者がその責任を負うことになります。
空き家が近くにあるのなら様子を見に行くことも簡単ですが、遠方だとそうもいかず、空き家を放置したままということはよくありますが、
その場合でもこの責任は免れず、所有者にとっては大きなリスクとなります。
火災により隣家に延焼した場合、故意または重過失がなければ賠償責任を負いませんが、見舞金などを支払うことは必要になり、
何より責任を負わないから燃えても良いということにはならないでしょう。
火災保険についても、特約を付けなければ、隣家の補償まではなされないのが一般的であり、空き家については一般物件(「専用住宅」でも
「併用住宅」でもない物件)としての加入になるために、保険料は割高になります。
また、庭の竹木の手入れを怠ると、伸びた枝葉が隣地に侵入し、トラブルの原因になります。
そして、手入れされず放置された空き家には、ゴミの不法投棄を誘発する恐れがあります。
ゴミが溜まれば悪臭もしますし、害虫が湧いたりして、ご近所から苦情が来る、あるいは苦情を行政に陳情されてしまうことにもなりかねません。
空き家の放置により、建物の傷みは進み、土地が荒れてしまうと、財産としての不動産の価値は低下し、売却を考えた際に不利益となります。
荒れた土地や建物は周囲の景観を悪くし、ひどいものになると近隣の地価や評判を下げるため、これを嫌う近隣とのトラブルの原因にもなります。
空き家を放置することのリスクは様々で、それを避けるためには、空き家を所有している以上は、一定の管理レベルを保っておく必要があります。
空き家対策業務について
空き家問題について、当事務所はどのようにお手伝いすることができるのかについてお話しさせていただきます。
このような場合、協議書の作成や相続登記、親交のない相続人との連絡役となって遺産分割のサポートを行い、登記を円滑に相続人名義に変更し、
相続問題を解決したうえで、今後の空き家の活用や処分のお手伝いをいたします。
当事務所においては、面倒な相続手続きを丸ごとお任せいただける遺産整理業務を取扱っているために、空き家の活用や処分の問題と併せて
ご相談いただくと、より効果的です。
このように空き家及び敷地を売却したいという場合、当事務所が売主代理人として売却手続きを行います。
空き家が遠方にあるため、現地不動産業者と契約して売却手続きをするのは手間がかかり過ぎるという場合でも、
当事務所の司法書士が代理人として売却手続きの一切及び登記手続きも行うために、煩わしい手間を省くことができます。
このように賃料滞納をはじめとする賃貸借関連の問題が生じれば、未払賃料請求により賃料を回収したり、滞納が長期に及ぶ場合やペット飼育禁止規定に違反している場合には、建物の明渡しを求め、賃借人を退去させる業務を行います。
当事務所では、このような賃貸トラブルの予防・解決に力を入れているため、問題の発生後のみならず、
これから賃貸をお考えの方へトラブル防止のための有効な契約書の作成やご相談にも乗らせていただきます。
空き家に関するよくある質問
空き家でもマンションの場合なら管理組合があるために、心配はいらないと思いますが…
マンションが空き家であっても管理組合があるから問題ないとは言えません。
空室に適切な手入れをせずに放置すると、室内の劣化の進行が速くなります。
その結果、売却する場合の売値は安くなり、賃貸する場合にあってもリフォームが必要となります。
また、害虫の発生や室内設備の劣化による水漏れで階下の住人に損害を及ぼした場合に、損害賠償請求を受ける可能性を考えると、
対策を採らずに放置するということは、やはり問題を含んでいると考えるべきです。
マンションであっても、空き家は増えているのですか?
築年数が古いマンションについては、空き家が増えています。
築年数が古くなれば、賃貸に出しても賃借人が入らなかったり、長年所有しているうちに相続が発生するなどが原因です。
戸建て住宅に比べれば、空き家率は低いですが、マンションにはマンション特有の空き家問題があります。
誰も使用していない状態が続いている場合などには、空き家対策は必要です。
マンション特有の空き家問題には、どんなことがありますか?
マンションの空き家の場合、空室に適切な手入れをせずに放置すると、室内の劣化の進行が速くなります。
そうなると、害虫の発生や室内設備の劣化による水漏れなどで、隣室や階下、さらには隣家などに直接的な被害を与える可能性があります。
隣のマンションがかなり古く、今にも外壁が飛んできそうです。
住んでる人も少ないようで、誰に対応を求めればいいのですか?
基本的には、問題のマンションの管理組合に対応を求めることになります。
しかし、管理組合が管理会社にマンション管理を委託している場合が多いため、要求の窓口はその管理会社になります。
空き家(空き地)には、固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置が適用されなくなると聞きましたが…
平成27年5月26日以降、所有の空き家が「特定空家等」に認定された場合、固定資産財および都市計画税において、
課税標準の特例措置(住宅用地の特例措置)の適用対象から外されてしまいます。
空き家の賃貸を考えていますが、一度貸したら返してもらうのが難しいと聞いたのですが…
「定期借家契約」の利用をオススメします。
日本の法制度上、賃借人の権利は強く保護されていることもあり、契約期間を決めて空き家を賃貸しても、賃借人が更新を望めば、
賃貸人としては正当事由がなければ、更新を拒絶することはできません。
しかし、「定期借家契約」であれば、契約の更新がなく、期間満了により終了する借家契約で、1年未満の契約も可能なために、
例えば1年先には住む予定があるけれど、それまでの間だけ賃貸するという使い方もできます。
空き家を所有しているが、かなり古いために取り壊しをしたいのですが、費用がかかります…
所在地の自治体に補助金制度があれば、一定の要件のをもとに利用することができます。
近所の空き家がゴミ屋敷となっており、悪臭がするのですが、どうにかできませんか?
近所のゴミ屋敷が悪臭を放っている場合、社会一般的に我慢すべき限度を超えており、これが原因で体調を崩したような場合であれば、
ゴミの撤去や慰謝料の請求が認められる可能性があります。
ゴミの撤去請求や慰謝料請求を考えている場合は、専門家に一度相談することをオススメします。